ご無沙汰しております。上坂です。今回のお題は「オーバープリント」です。
前回の留意点でもありました「オーバープリント」。分かりやすいようでいて分かりにくい、この機能について解説します。
「ノセ」とは?
「ノセ」の処理
オーバープリントは、いわゆる「ノセ」の処理となります。ノセというのは、簡単に言うと何らかの色の上にオーバープリント処理をされた「色を乗せる」ということになります。
一般的に、オフセット印刷に使用されるインキの色は完全に不透明ではありません。ということは、オーバープリント処理をした場合、普通に考えると下に何らかの色があった場合には、下の色が透けて見えることになります。(乗算、いわゆる色の掛け合わせとなるのですね)
その場合、印刷物としては困ったことになるわけで。写真や文字の色が透けて見えるようでは見栄えが悪くなってしまうし、印刷物としての役目を果たさないことになります。
意図的なデザインとして、という状況でない限りは全てにオーバープリント処理をすることは都合が悪いわけですね。
「ヌキ」とは??
「ヌキ」の処理
対して、オーバープリント処理をしない色は、「ヌキ」と言われます。言葉のとおり、ある色の上にヌキの設定の色があるときは、その色の真下は「紙色」です。
説明が難しいのですが、「上の色の形で、下の色が型抜きされている」と考えると分かりやすいかもしれません。
実際に印刷物を見ると、目を凝らして見てもほとんど分からないですが、色の上に載った写真などの下は、写真の形に型抜きされているのです。(写真の印刷の下は紙色ということです。)
インキが不透明ではないといっても、下地が紙色であればその色しか塗られていないということで、その下の色の影響を受けずに意図したとおりの色に見えるということです。
弊社ではK100は「ノセ」、それ以外は「ヌキ」
オーバープリントの自動処理に関して
弊社では、K100のブラックに対してのみ、自動的に「ノセ」がかかり、それ以外の色は「ヌキ」処理となります。こちらに関しての理由や注意点は、前回の留意点をご一読ください。
また、前回の補足ではありますが上記のオーバープリント処理、「ノセ」はIllustratorまたはIndesignで、ベクトルデータに対してK100を設定したオブジェクトのみを処理します。
画像データに対しては、たとえPhotoshopなどでK100の色で塗りつぶした画像であってもノセ処理はかかりません。画像全般にノセの処理はされないとお考えください。(これは画像を半透明にして、下の色を透けさせているようなデザインは除きます。このようなデータはオーバープリントの有無にかかわらず半透明として扱われます)
オーバープリント処理に関する注意点
前回の内容に重複するところもありますが、もう一度注意点を。
- 白のオブジェクトにオーバープリント処理をしない(前回の留意点をご参照ください)
- K100以外のオブジェクトにオーバープリント処理を使用して、乗算などの効果、デザインを作らない。(自動処理により、意図しないデザインとなります。)
- 下地に色があり、その上に大きなK100のオブジェクトを乗せるときは、オーバープリント処理に注意する(★)
上記の★について解説します。
ポスターなどで大きな見出し、タイトルなどをK100の色で使用されるとき、その面積が大きければ、オーバープリントの自動処理により下地の色が目だって透けて見えます。
デザインが小さければあまり気にする事も無いのですが、ポスターなどの場合はそれが非常に目立ち、見栄えが悪くなることがあります。このような場合は、K100以外の色を使用するようにしてください。
K99%やリッチブラックなどがおすすめです。K100%以外であればオーバープリント処理がかからないので、下の色が透けて見えることはありません。
いかがでしたでしょうか。オーバープリント処理というのは、デザインとして使用する機能とは少し違います。
基本的には「印刷の仕上がりを向上させるための工程上の処理の機能」だと考えて頂くとよろしいかと思います。
いくつかは本家のデータ作成の留意点でも解説がありますので、合わせてご確認いただくと幸いです。それではまた来月。